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行政書士の野積です。

いつも、ブログをお読みいただき、
ありがとうございます。

だいぶ、投稿をサボっていましたが、
久々に発信させていただきます。

■自筆証書遺言の検認、東京家裁に行ってきました。。

昨年末(2018年末)、ある病院の事務長から
電話がありました。
単身の高齢男性(76歳、Aさん)が入院したが
身寄りがいない。

病院としてはイザというとき(とは、亡くなったとき)に、
手続きをしてくれる人が必要とのこと。

「野積さんのほうで、代理人を引き受けて欲しい」
という依頼です。

私は、とりあえずご本人(Aさん)に
お会いしましょう、ということで病院へ。

Aさんに会って話をすると、とてもしっかりしていて、
病人とは思えない。
しかし、別室で主治医の先生より、
ガンの終末期の患者さんは、容態が急変します。
Aさんの余命は、1カ月くらいでしょう
と伺い、「えっ!」と思いました。

実際にお話しした様子からは、まったく想像できません。

私からAさんに、「交流のあるご親戚はいますか?」
と聞いても
「俺は、親戚つきあいはしていない。」と素気ない。

そしてAさんは、自分の遺産は親戚ではなく、
困った人のために残したいという希望がありました。

そこで、私から「遺産は寄付にしますか?」と聞いたところ、
「そうしてくれ」とのこと。
そのため、遺言をすることを提案しました。

その後、私のほうで遺言(案)を作成し、
公正証書にする準備に入りました。

しかし、そのとき主治医の「容態が急変しますよ」
という言葉が頭に浮かび、Aさんに、まずは
自筆で遺言書を書いてもらいました。

平行して、公証役場に公証人の病院への出張を依頼し、
作成期日も決めました。

あとは、公証人が来て公正証書を作成すれば、万事OKと。

と、ところが、、、Aさんは、作成期日より前に
容態が急変し、亡くなってしまいました。
主治医の先生の見立てどおりでした。

そして、私の手元には、100均で買ったレポート用紙に、
Aさん自筆の遺言書1枚が残されていました!

しかも遺言執行者は私になっています。
遺産の総額はウン千万円ほど。
責任重大です。

私は、Aさんの遺言書を大事にファイルに納めて保管し、
相続人の調査を開始。

Aさんは婚姻歴がないため、相続人は親、兄弟姉妹です。

戸籍調査を進めた結果、相続人は何と!、
8人いることが分かりました。

8人全員の現住所が判明した時点で、「遺言書検認申立書」を
作成し、東京家庭裁判所(以下「家裁」)に提出しました。

その後、Aさんの実兄と連絡がとれ、Aさんのご生前の様子や
遺産の寄付のことなどをご説明し、快く了解していただき、
ひとまずホッとしました。

その後、家裁の書記官から「3月XX日に、東京家庭裁判所のXX階、
家事XX部の書記官室にお越しください。
持ち物は、『遺言書』と『印鑑』です。」
との連絡がありました。

そして迎えた、遺言検認の当日。

家裁XX階の書記官室へ。
受付簿にチェックして、待合室でしばし待機。

当日は、相続人は誰も参加せず、寄付する遺贈先の
責任者のみ参加です。

時間になったところで、書記官から「審判室にご案内します。」
とのことで、審判室に入室、着席。

書記官が裁判官に内線で電話し
「遺言検認事件の関係者、全員揃いました」と伝えた。

しばらくして、担当の裁判官が入室し、裁判官席に着席。

以下、会話風に
裁判官(以下「裁」):裁判官の〇〇です。よろしくお願いします。
私:申立人の野積です。よろしくお願いします。
受遺者(以下「受」):遺贈先の責任者で〇〇と申します。
裁:(申立書をパラパラとめくって、目を通す。その後、、)
  この遺言書は封印されていましたか?
私:いえ、遺言者は封印しませんでした。
裁:わかりました。申立人こちらへお越しください。
 この遺言書の筆跡は、遺言者のものに間違いありませんか?
私:間違いありません。
裁:わかりました。席にお戻りください。次に受遺者の方、
 こちらにお越しください。この遺言書の筆跡は、
 遺言者のものに間違いありませんか?
受:私はわかりかねます。
裁:了解しました。席にお戻りください。
 それでは、受遺者の方は、遺言書の筆跡は、遺言者のものか不明
 と記録させていただきます。
 これで、遺言書の検認を終了します。
 あとは書記官の指示に従ってください。
(裁判官は退席)

この後は、書記官から「検認済証明書」を発行してもらい、
手続き終了となりました。
この間、約30分。あっという間に終わりました。

今回、遺言の検認を実際に経験してみて、遺言の検認が
内容の有効性を確認するためでなく、現状を確認して
証拠を保存するための手続きであることが、
よく分かりました。

検認では遺言内容には全く触れず、質問内容は、
「保管状況と筆跡」の2つのみでしたから。

そういう意味では、こんなに仰々しく検認手続きしても
何の意味あるの?
という気もしないではありません。

と思っていたところ、今年施行される改正相続法にて、
「遺言制度に関する見直し」が行われ、
自筆証書遺言が利用しやすくなることが分かりました。

そのポイントは、以下の3つ
①自筆証書遺言の方式緩和
 ⇒財産目録をワープロで作成可
②遺言執行者の権限の明確化
 ⇒遺言の内容を実現する権限を明確に
③公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設
 ⇒検認手続きが不要に

特に、上記の③。自筆証書遺言でも法務局に保管したものは、
「検認手続きが不要」になることが大きなメリットです。
(法務局における遺言書の保管等に関する法律、2020年7月10日施行)

現在の制度では、自筆証書遺言は検認が済まないと、
執行できません。

しかし、新制度では、相続開始後にすぐ遺言執行に
着手することが可能になります。

遺言の保管によっても、遺言の有効性という本質的な争いを
避けることは出来ませんが、
「遺言者自筆の遺言の存在」についての争い
は避けられると思います。

相続や遺言にまつわる様々な事件がありますが、
自筆の遺言がより使いやすくなることで、
課題解決の一助になるのではないかと期待します。

■■ 編集後記 ■■

今回の仕事で出会ったAさん。
ご本人も、ご自分の病状を認識されていました。

人は、自分の死が迫っていることが分かると
とても心かき乱されると聞いていました。

私も、どのようにAさんと向き合えばよいか、
悩みましたが、一方のAさんは、飄々とした感じ。
「あとのことは、頼むよ」と言って、さっぱり。

私:「あとのことは、私のほうで手続きしますから、
しっかり食べて、元気でいてください。」と。

Aさん、とても安心した感じになりました。

こういうときは、こちらも身構えず、自然体で
振舞えばいいのかな、ということを教えられました。

人の最後に向かあうとき、とても厳粛な気持ちに
なります。

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