<スポンサーリンク>

相続コンサルタント/FP/行政書士の野積です。

いつもブログをお読みいただき、
ありがとうございます。

これからは、残暑が厳しく感じます。
体調に留意していきたいと思います。

■「同時死亡の推定」とは、どういうことか

「同時死亡」、あまり聞きなれない言葉かと
思います。

これは、民法の第一編「総則」にあります。
民法には、人の出生、成人、結婚、そして
死にいたる、一連の法律関係が定められています。

そして、相続に関して重要な内容は、一つは
「結婚」、もう一つは「死亡」です。

それは、
「相続は、死亡によって開始する。」(民法882条)
とあるとおりです。

人が亡くなると、その人が持っていた財産の
相続が開始され、相続人に分与される、という
流れになります。

一般的に考えると、まず親が亡くなって相続が
開始され、子が親の遺産を相続する。

そして、子が年老いて亡くなり、次にその子が
相続をする。
という具合に、順繰りに次の世代に遺産が
引き継がれていくというイメージです。

このように、相続では、人の死の前後関係が
大変重要です。

そのため、戸籍では、死亡欄の記載では、
「〇年〇月〇日 〇時〇分」と、死亡時刻が
細かく記載されています。

これは、死亡時の前後の判定は、分刻みで
行うということです。

もし、ある親子が病院に担ぎ込まれ
大変重篤な症状だと仮定しましょう。

そして、ほぼ同時に2人が息を引き取ったと
します。

親が1分でも早く亡くなると、この相続は
親から子になされます。

しかし、子が1分でも早く亡くなると、
子から親への相続となり、逆に親から
子への相続はありません。

もし、子に配偶者などがあった場合には、
子が親より1分早く亡くなっただけで、
その配偶者には、親の遺産は一銭も分与
されません。

何だか、理不尽な感じもしますが、これが
法律上の原則です。

実際には、このような場合には、相続人間での
話合いの中で、残された配偶者への財産分与
が検討されるでしょう。

このように、死亡時刻がハッキリしている
場合は、その前後関係が争いになることは
ありません。

◎同時死亡の条文と事例

tしかし、親子が飛行機や船に搭乗していて、
遭難して亡くなった、というようなケースは
どうでしょうか。

そこで登場するのが、「同時死亡の推定」
という定めです。

条文を見てみましょう。
「数人の物が死亡した場合において、そのうちの
一人が他の者の死亡後になお生存していたことが
明かでないときは、これらの者は、同時に死亡
したものと推定する。」(民法32条の2)

この条文に基づき、同時に遭難にあった親子
「同時に死亡した」ものと推定されます。

それにより、この親子間では相続は開始しない、
という結論になります。

なお、ここで「推定」と書いてある部分が
クセモノです。

法律上「推定」というのは、その事実に反する
証拠が出てこない限りにおいて、という条件付きの
定めになります。

もし誰かが
「いや~、親のほうが先に息を引き取ったんだ。
診断書もあるぞー」
など、反論すると、そこから先は裁判に
持ち込まれる可能性が高まります。

人の死は悲しいことですが、一方で、このように
死と相続は密接につながっており、生々しい
ことになります。

「同時死亡の推定」には、いろいろと
考えさせられます。

■■ 編集後記 ■■

婚姻、養子、後見、債権・債務など、
民法の様々な条項は、相続とどこかで
繋がっています。

相続というのは、被相続人の権利・義務を
包括的に承継すること、なので、親の生前の
社会的な地位や立場が、深く関係します。

現在では相続というのは遺産相続の面が
表に出ていますが、その裏では家族関係が
深く関係しています。

家族のつながりを大切にしたいと思います。

<スポンサーリンク>

<スポンサーリンク>