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相続コンサルタント/FP/行政書士の野積です。

いつもブログをお読みいただき、
ありがとうございます。

■認知機能の低下した父親の遺言は有効か

「平成30年版高齢社会白書」によると、
日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は、
27.7%とのことです。

現在は、4人に一人以上が高齢者です。

この傾向は、これからも進み、平成48年には
3人に一人が高齢者との推計です。

ピンピンころりでいければハッピーですが、
なかなか、そうはならないケースも。

年令が進むとともに、表面化してくるのが
「認知症」です。

統計によれば、平成24年の時点で、65歳以上の
認知症の人は、462万人とのこと。
年々上昇傾向です。

認知症といっても、軽度から重度まで、かなりの
幅があります。

普通に会話はできるけど、ついさっき話したことを
忘れて、また同じ話をしてる、という方は軽いほう。

一方、重度の方は、家族の顔も忘れてしまい、
まるで別人のようになってしまいます。

高齢の親をもつ方にとっては、介護の対応も
大変ですが、親の財産管理や相続のことが
心配になります。

仲の良い家族でも、親が亡くなって相続が
開始し、遺産分けの場面になると、争いになる
というケースは結構あります。

相続を争続にさせないための手段として、
「遺言」があります。

遺言は、親の生前の意思表示なので、争いを
防止する効果があります。

ただ、問題になるのは、その遺言の内容が
本当に親の意思なのか?という疑念が生じた
ときです。

親に認知症の症状があり、そのような中で
遺言書を作成した、という状況のときに
疑念が出てきます。

実家で親と同居している長男が、自分に有利な
遺言を書かせたんじゃないかと。

果たして、認知症の親がなした遺言は、有効
なのでしょうか。

遺言する人に求められる能力については、
民法に定めがあります。
主な条文は、以下のとおりです。

第961条
15歳に達した者は、遺言をすることができ

第962条
第5条、第9条、第13条及び第17条の規定は、
遺言については、適用しない。
(注釈:未成年者や成年被後見人の行為能力の
制限を定めた規定は、適用しないという趣旨です。)

第963条
遺言者は、遺言をする時においてその能力を
有しなければならない。

これらの条文から、たとえ認知症の症状がある人
でも、その人が遺言するときに一定の判断力が
あれば、その遺言は有効だ、ということが
分かります。

公正証書による遺言であれば、遺言能力の有無は
公証人という第三者が証明するため、有効性が
争いのタネになることは、まずないでしょう。

しかし、自筆で作成した遺言については、
その有効性に疑義が生じる可能性が高くなります。

遺言をするときに、少々認知症の症状があった
親が作成した遺言書の内容が、とても複雑だった
としましょう。

そうすると、遺言をする時点で、複雑な財産分与
を正確に理解していたか、ということが問題に
なります。

一方、「全ての財産は、妻●●子に相続させる。」
というような、簡単な内容であれば、本人も
理解していただろう、と推察されます。

結局は、その遺言に示された内容との関係で
意思能力が認められるか、という観点から
判断されることになるでしょう。

認知機能の低下した父親が書いた遺言書でも、
原則は有効ということになります。

子などの相続人の間で、遺言内容について
争いがなければ、遺言内容は確定し、その
内容にそって遺産分割がなされます。

親の相続が心配で、遺言をしてもらおう
という場合には、その内容に疑義が生じないよう
親が元気なときが良いです。

もし、少々認知機能が低下してきたような
場合には、医師から診断書を出してもらい、
遺言するときに一定の認知機能があったことを
後日証明できるようにしておく、などの
方法も考えれらます。

これから、益々高齢化が進んでいきます。

相続対策は、早めに考えておいたほうが
よいですね。

■■ 編集後記 ■■

認知症と遺言書の有効性の問題。
なかなか、奥が深いなと思います。

通常の法律行為では、成年被後見人は、
本人保護の趣旨から、かなり制限が
かかります。

しかし、遺言については、本人意思の尊重
という観点からでしょうか、制限がかなり
緩められています。

後に残る相続人に争いのタネを増やさない
ようにしたいものです。

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